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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)4476号 判決 1953年6月26日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人の上告趣意について。

所論は、憲法違反をいっているが、実質は法令違反の主張であって、上告適法の理由にならない。そして、義歯又は金冠を製作すること自体は純然たる技工の範囲に属し、歯科技工師がこれをなすことができるものであるけれども、印象採得、すなわち義歯又は金冠製作のため直接患者の口中より「かた」をとる行為、試適、すなわち義歯又は金冠の製作に際し直接患者の口中にあてて適否を試みる行為及び嵌入、すなわち完成した義歯又は金冠を人体に装着するに当って修正する行為は、いずれも直接患者について歯牙、歯根その他口くうの状態を診察してこれを施すことの適否を判断し、患部に即応する施術をすることを要するものであり、その施術の巧拙如何は患者の健康に影響を及ぼすおそれがあるから、当然歯科医業の範囲に属するものと解すべきである。

なお記録を調べても、本件に刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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